ange~天使が恋した王子様~
「紗江さん…?」
「…杏樹」
ワンテンポ遅れて返ってきた返事。
でも、その声はいつものものだった。
「杏樹…………おいで」
私はゆっくりベッドに歩み寄った。
「杏樹、ごめんね、心配かけて」
私は首を横に振った。
「大丈夫よ」
私はコクリと頷く。
「私は、大丈夫」
私はまた頷いた。
「だからね、杏樹。
……………泣かなくていいのよ」
紗江さんの声は、いつも通り、優しかった。