ange~天使が恋した王子様~



「杏樹」


「昨日、ばいばいって言った」


「俺は納得してない」

最低だって、わかってる。

あれだけ傷つけて。

それでも離れることを許さないなんて。


「もう、やなの」


「わかってる」

最近のお前の顔はいつだって苦しそうだった。

少し考えれば、ちゃんとわかることだった。


「辛いの」


「あぁ」

お前が泣いてること、どこかでわかってた。

でも、気づいたらお前を離すしかなくなりそうで、怖かった。


「怖いの」


「あぁ、」

杏樹、俺も今怖い。

今までにないくらい、怖い。


「それなのに、どうして離してくれないのよ…‼︎」


「離すかよ」


「も、離してよ…」


「いやだ」


「もう、無理だよ…」

膝に顔を押し付ける杏。

小さな嗚咽さえ聞こえてきた。

< 449 / 484 >

この作品をシェア

pagetop