ange~天使が恋した王子様~

「そんなの今のうちだよ」


「え?」


「今はそれでいいのかもしれない。

だけど、きっといつかそれだけじゃ足りなくなる日が来る」


「どういうこと…?」


「そばにいればいるほど、近くにいるのに自分を見てくれないことへの物足りなさが出てくるってこと。

きっと、自分を見てほしい。って欲望がいつかは出てくる」


「……………」


「そうなったら杏は、自分を責めるでしょう?」


「…………」


「反対なんて、したくないよ。
応援、したいよ。
でもね、杏。

それで、本当にいいの?
傷つくのは目に見えてる。

ここからは、悲しみしかないのかもしれないんだよ?

それでも、いいの?」


「…………」

結局、なにも応えることができないまま、私たちは教室に戻った。
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