その身は凍る
「暇だ・・な」




 大きな入道雲を見つめながら男はそう呟き、鼻から息を吐き出しつつ、住んでいる安アパートへ足を進めた。



 コンクリートの階段を上り、一階の部屋を通り抜け、二階へ続く階段を上ったところにある自分の部屋へと進んだ。



 部屋に入るとまた髪をボサボサと掻きながら、年季の入ったパイプベッドに腰を下ろし、床に弁当とタバコの入った袋を置いた。




「・・寝るかな」




 仕事をしていたときは、辞めてしまえば充実した生活を少しの間、送ることができると男は思っていた。


 しかし予想に反し、一週間も経たずに男は時間を持て余し、求職していた。 


 求職中ではあったが、選り好みしているせいか本格的な就職活動はしていなかった。
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