その身は凍る
 男は暇そうに窓の方に目を向けて、一つ短いため息を吐いた。



 窓の外では蝉がけたたましい鳴き声を上げていた。


 お盆ともあってかアパートはおろか町も妙に閑散としていた。



 そもそも男が住んでいるアパートは、今年になって半分しか部屋は埋まっていなかった。



 もしかしたら俺一人かもしれないな。



 男はふとそう思うと、買ってきたタバコの封を開けて、気怠そうに口にくわえた。



 しかしどうしてここは人が入らないのかね。



 暇なのか、不意にそんなことを考え始めた。



 男の住んでいるアパートの近くには、歩いて10分もかからないところに駅があり、周辺にはスーパーやコンビニ、病院、歯科医院などがあり、生活には不自由しない。 



 娯楽施設は街に出ないとないが、その利便性もあってか周辺のアパートはほぼ埋まっていた。
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