イケメン・コンプレックス
携帯は持っていないようで湊の携帯で掛けることになった。
幸い親の番号は覚えているみたいで助かった。
「湯地 夏希(ユジ ナツキ)。」
「え?」
「俺の名前。」
「あぁ、夏希くんね。んじゃ今からかけるから。」
やっと名前を知れて内心ホッとする。
なんと説明すればいいのか不安だったのだ。
寒さのせいか、緊張のせいか震える指先で言われた通り番号を押していく。
耳に当て、コール音を数えて待った。
6コール目に慌てた様子の男性の声が耳に入ってきた。
「は、はいっ!」
「あ、あの・・・私、渡瀬と言います。夏希くんのお父様でしょうか?」
「えっ、はい、そうですけど、夏希っ、夏希と一緒にいるんでしょうかっ?」
「はい。デパートの前でうずくまっているのを見かけて・・・」
「ご迷惑をおかけしてすみません!すぐっ、すぐ迎えに行きます!」
それから、デパートの場所を教えて電話を切った。
「・・・なんだって?」
「すぐ迎えにくるって。」
「ふーん。」
やっぱり心配してるんじゃんって言ってやろうと思ったが、意固地になりそうだから軽く頭を撫でるだけにしといた。
触んなと言いつつ、手は払いのけられなかった。
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