イケメン・コンプレックス
「いいよなーモテて。」
いつの間に来たのか一喜が屋上の扉から半分身体を出しジト目でこちらを覗(ノゾ)いていた。
長年一緒にいると分かるのだが口元が微妙(ビミョウ)に上がっているのをみると絶対作っている表情だ。
少しも羨ましがっていないだろう。
「馬鹿言うな。バカズキ。」
「ひっどいなー」
軽い口調でケラケラ笑う。
実を言うと中身が乙女な事は一喜すら知らない。
周りがあまりにも男扱いするものだから、言うに言いだせず流されて自分自身で男っぽく振る舞うまでに至る。
「俺、ひそかに狙ってたのに。湊(ミナト)のせいだ。」
前から思っていたがコイツが1番、私のことを女だって忘れている気がする。
私は渡瀬 湊(ワタセ ミナト)という。
戸籍(コセキ)も正真正銘、女だ。
「親友だろ?紹介してー」
この煩いのは小学生から親友の目黒 一喜(メグロ カズキ)という。
自分だってそこそこモテているはずだ。
典型的な狐顔で、飄々(ヒョウヒョウ)とした性格がなぜか人気なのだ。
初めて出会った時は相性が合わないと思っていたが、ちょろちょろ纏(マト)わりついてきてかかわっていくうちに慣れてしまったのか今では1番の親友という恐ろしい事実だ。
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