彼の胸の中で。


だから、最後に言えてよかった。



「満、私は誰より満が好きだよ。愛してる。 だからっ、もう、やめよう…っ」

「――…っ」

「私はずっと側にいるから。これからもずっと、側にいたいから…」

「……俺だって…誰より蜜が好きでっ、愛してる…」

「…っ、分かってる。だから、これが最初で最後なんだよ…」



私たちが想いを伝え合うには、世界はあまりにも残酷で。


この世界は許してくれないから…。



「満」

「…蜜」

「「好き。ずっと、愛してる」」



これが、最初で、最後。


誰より好きな人。


誰より愛しい人。


今日で終わる。終わらせなくちゃ、いけない。


肌寒い10月の風が私たちの頬を優しく撫でた気がした。



「帰ろっか……お兄ちゃん」

「……あぁ」



どれだけお互いを想っていても、デートなんて出来なかった。

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