彼の胸の中で。
「蜜(みつ)」
「ん?」
「……いや、なんでもない」
首を振る君の言いたい事はなんとなく分かる。
だけど口にしないのが私と君の約束だから、あえて知らないフリをする。
分かってる。分かってるよ。
だから大丈夫。
きっと、私が同じ気持ちでいる事を、君も分かってくれてるから。
だから何も言わないで。
「それよりどこ行くの?」
私の問いに君は少し考えてから口を開く。
「うーん…近くの公園?」
「は? 公園?」
「そ。近くにあんじゃん、公園」
「いや、まぁ、あるけど…」
「別のとこが良かった?」
「……ううん。一緒ならどこでもいい」
「決まりな」