彼の胸の中で。
大好きな君の少し後ろを歩く私は、これだけで幸せな気持ちになる。
だからかな。
こんなに泣きたくなるのは。
3分程歩いたところにある公園は私と君が昔からよく来ていた公園で。
ただ、あまりにも久しぶりだから、変わってしまった風景に心が寂しくなる。
「こんな風になってたんだね…」
思わず零れた言葉は風に流され、君の耳に届いたかは分からない。
それでも不意に繋がれた右手が優しかったから、きっと届いたんだと思う。
「蜜、来て」
愛おしそうに私の名前を呼ぶ君の声が好きでたまらない。
ずっと呼んでいて。
私の名前だけを呼んでいて欲しい。
他の女なんて知らないでいて欲しい。
他の女なんて目に入らないような、そんな女に私はなりたい――…。
繋がれた右手を引かれ古くなったトイレに連れて行かれる。