彼の胸の中で。


私が満を好きにならなかったら。


満が私を好きじゃなかったら。


なんて、意味のない考えばかりが頭を廻る。


私だって本当は嫌なの…。 満が好きだから。誰より愛してるから。 だから本当は伝えたくて仕方ないの。



「一度でいいから…言わせて……」



私の願いは、満が幸せでいることなの。


もうこれで最後にしよう。


もう、お互い前を向こう。



「みち、るっ…あのね、わたっ、しっ……」



堪えきれなかった涙は、言葉と共に私の足元へと落ちていく。



「蜜、お前が泣くのは見たくねぇよ…」



そんな私の言葉を、涙を、いつだって優しく拾ってくれるのは満だけで。


優しいから甘えてしまう。


愛しいから離れたくない。


――それなのに離れなくちゃいけないなんて…。


< 8 / 12 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop