私のいとおしい残念な男達
「黒木のお母さんって、若いのね」
運転する黒木の横顔に助手席から話しかける
「若いよ、45だから」
「…………え?」
45歳って、黒木28歳だから…………
「バカ、再婚だ。俺が小学校の時にオヤジと結婚したんだ。俺はオヤジの連れ子」
「あー……」
だから弟くんも葵ちゃんもまだ学生なんだ
「お父さん、まだ大変だぁ」
「あ、オヤジは6年前に死んだ」
へっ…………?
平然とした顔をしてそんな事言いだすから、思わず固まった
「俺は就職前で、近所の印刷会社に内定もらってたんだけど事故でなぁ。」
「印刷会社?」
「ああでも、和馬に今の会社に口利いてもらって……まぁ、和馬のオヤジさんにだけど」
大学教授の和馬のお父さんに?
「…………」
普通に話してるけど、結構大変な事だよ
「なんか、ごめん……」
もしかして、黒木が一家を支えてる感じ?
なんかすごくいろんな眼鏡で見てた、あんたの事
「クックックッ、バカ小夏。なんて顔してんだ? 同情してると車でラブホに連れ込まれるぞ」
「なっ?!ちょっと」
意地悪くそう言いながら笑う黒木
車はラブホではなく、途中ファミリーレストランに入って行った