私のいとおしい残念な男達
          ** 黒木side **


「………口きいてやらないって、子供か?」


車から飛び出して行った小夏の後ろ姿を見送りながら、思わずクックッと口が上がる

煙草に火をつけ、車のエンジンをかけようとしたところで、運転席の窓をコンコンと叩かれ男が覗き込んできた


「?」

声が聞こえる程度に窓を少しだけ開け、その男を見上げた

背の高く、今風に黒髪を緩くパーマのかけた、一見美容師みたいな男

「なぁ、あんたさっきの女の何?」

「……………」

とりあえず車から出て、その男の前に立った


「何? お前のが誰だよ?」

背はほぼ同じくらいだ。

さっきの女ってのは小夏の事だろう、この男小夏の知り合いか?

「今日は和馬さんとデートしてたんじゃなかったのか? うちの姉貴のは……」

小夏の帰って行った方に視線を向けたその男が呟くようにそう言った


「へっ?」

今この男『姉貴』とか言ったか?


「小夏の弟?」

「だから、あんた誰?」

思わず弟を指差して確認したが、確かにどことなく似てるか…………


「俺は…」

俺はあいつのなんだ?

「………ともだち」


「姉ちゃんの男友達……?」

「同じ会社の和馬の友達だ」

まあ、間違ってないか

「ふぅん……じゃあ今日和馬さんも一緒だったんだ」


「…………」

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