私のいとおしい残念な男達
黒木……?
背の高いその後ろ姿しか見えなかったが、確かに黒木だ
それに、向き合って話す女子
「今フリーだって聞いて、私にだってチャンスをくださいっ」
黒木に隠れて見えなかったが、たぶん話し声から、黒木に告白しているらしい
早いなぁ……秋山さんのことがあってからまだ2週間くらいしか経ってないのに
「…………」
もう顔を出す訳にもいかず、その切羽詰まったような女の子の声だけが嫌でも耳に入る
どうしよう……何せその場所が悪い
非常階段の扉から出ようも、見えるとこのすぐそこに二人はいるし
「あー……悪い、今はいいや」
気怠そうに答える黒木の声
「………私、特別じゃなくてもいいんです。黒木さんの暇な時だけの相手でも……」
「なんだそれ、セフレにでもなるって?」
少しせせら笑うように聞こえる
「本命ができるまでの継なぎでいいです」
女の子の声がくぐもって聞こえるから、たぶん黒木に抱きついているんじゃないかと思う
「……………」
少しの間沈黙している
「悪いな、そうゆうの今は面倒くさいわ」
小さい溜め息まじりのそう言う声と彼女を離しているだろう服の擦れる音
なんだか………耳を塞ぎたくなる
でも、すぐに彼女のさらに切羽詰まった声が響く
「……じゃあっ、キスしてくれたら諦めます」
「!!」
声を出しそうだった口を慌てて手で押さえた
「お願いします………」
「………………」
また、黒木は何も答えないし、彼女も沈黙して
下から音も声も聞こえてこない