私のいとおしい残念な男達

「………っ」

「最低なのはお前も同じだろ……それに、俺とは口きかないんじゃなかったか?」


…………そうだった
口をきかないと啖呵をきったのは私の方だ
それに黒木の口からは、私に嫌悪を含む言葉しか発しない

そうだよ、どうせもう3人でいる事なんて限界なんだから……


私だって、本当は何も言われたくないし、考えたくない

「だったらそこどいて………っ」


1階までの階段を降りて、もう帰るんだから

「そしたらもう、ご希望通り喋らないし、文句だって言わないから」

顔を伏せ、前に立ち塞がる黒木を避けて通り過ぎようとしたのに

またガッツリ腕を掴まれた


「だから、離し………」

「文句があるのは俺の方だ………大体、お前を見つけたのは和馬じゃない」

掴まれた腕に、ぎゅっと黒木の力がこもる

「え、痛っ………ちょっ」.


引けば、どうしようもなく引っ張られ

引き寄せられた黒木の胸の中に閉じ込められる

「黒木、離して」


こうなるといくら藻搔いたっていつも抜け出せない

「嫌だ」

「痛いって……」

和馬とは違う、私の事より自分を押し付けてくる想いそのままの力強さ

もしも和馬がこうして求めてきてくれたら私も安心出来るだろうか

「…………」


黒木からはタバコの匂いがして、和馬とは違う
それに、こっちが離れようとすれば余計に力がはいる

黒木はどうしたら離してくれるだろう



「………和馬なら、私の嫌がる事はしない」


ズルいやり方だけど、そう言うとスルリと黒木の腕が外れた



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