私のいとおしい残念な男達
あれから
一度も会って話す事がなくなった和馬と黒木
あの夜、涙が止めどなく溢れて仕方なかったはずなのに
いつの間に眠っていた……
次の日の朝、頭痛も足のフラつきもなくなってはいたが、寝不足と泣きはらした顔の突っ張りで気分は最悪だった
寝室から起き上がると、隣のリビングのソファーで毛布を被り黒木が眠っていた
身体を気遣われたが「大丈夫」と答えて、2人でコーヒーを飲んだ
起き抜けに「ゾンビみてぇな顔だな」なんて、
そんな一言を言われただけで、後は沈黙ばかりで会話もないままだった
駅まで一緒に行って、それぞれのホームに
黒木とはそこで別れたっきりだ
もちろんいままでだってそんなに頻繁に会っていた訳じゃなかったが、なんとなく自分からボーダーラインを引いてしまった手前、気にするのはおかしいと思う
そして和馬とも、『友達』に戻ったとは言っても
別れた訳で、これ以上彼に迷惑は掛けられない
だから、部屋の鍵も黒木に渡して自分の置いてあった私物も持って帰った
【いろいろごめんね。ありがとう。】
そう、メールを入れて………
「あ………」
モモちゃんと二人、会社のロビーにたどりつくと、そこで見覚えのある人を見つけた
その人は私に気がつくとニコリと笑顔で手を上げた
「小夏さん、久しぶり」
前に会った時はジャケットにラフな服装だったが、こうしてスーツを着た彼は、なるほど確かに真面目な弁護士さんに見える