私のいとおしい残念な男達
「これ………あの時の」
黒木が井ノ上さんから取り上げたって言ってた薬だ
「一応一般的には睡眠導入剤みたいなんだけど、薬っていう物は個人の体質によって大変な事が起こるからね。小夏さんは大丈夫?
例えば偶に頭痛がするとか、なんだかしゃべり辛くなったとか………」
「いえ、大丈夫です」
「そう、良かった。でももし今後なにかあったら遠慮なく事務所に電話して」
薬を仕舞い、その代わりに彼の名刺を渡された
「その薬、和馬から?」
「そ、桐生は僕をドラえもんのポケットのように扱うんだ。ったく………」
「ドラえもん………?」
「タダで使える便利な道具みたいなね、僕だって本当は忙しいのに……」
要は舎弟的な………?
ふと、貰った名刺に目を向けた
「………本当に弁護士さんなんだ」
「あれ? 言ってあったよね僕」
「あ、いえ……ただ和馬の大学生時代の友達って初めて会ったような気がして」
考えてみたら和馬の学生の頃の話って聞いた事あったっけ?
聞いた事のあるのは、昔付き合ってた人の話
『実際俺、大学の時には同性と付き合ってた』
あの時、初めて聞いたような気がする………
「ああ、確か黒木君は桐生の高校からの友達だったっけ、大学は別々で」
「ええ、そう……」
かな、確か……
「でも、たぶん僕は彼より桐生の事を理解していると思うよ」
出されたコーヒーを飲みながら、意味あり気にそう言った