私のいとおしい残念な男達

「それに、桐生だって君と普通に付き合ってたんだろ?だったら何が不満だったの?
その歳で、ハイスペックな彼氏と別れるとかキツくない?」


「…………」




思いの外失礼な人だ

「私は、和馬の外見だけで付き合ってた訳じゃないです」


「だろうね。彼の内側に入り込む事が出来るのは難しいからね。だからこそ黒木君みたいに、何も知らないままでいれば良かったのに」


「………それじゃあ、本当の和馬が分からないままだったわ」

確かに和馬の黒木に対する気持ちを無視して、そのまま付き合うことは出来たけど

私の気持ちがついていかなかった


「でも結果的に桐生に一度背を向けられたら、戻る事は出来ないよ。まるで前の彼との別れみたいに……」

目の前でコーヒーを啜りながら言われた言葉に、心臓の奥が小さく騒ぎ出した

「前のって、大学時代に付き合ってた人ですか?」

和馬の付き合っていた男性


「そう、彼は僕の知り合いでね。それなりに上手く付き合っていたんだけど、一応法律に携わる仕事の人だったから………最終的に桐生の方が身を引いたんだ」

この人は、本当に私や黒木の知らない事をなんでも知っているんだ

私が付き合っているうちに知りたかった事まで


「………今そんな事、私には関係ない」

和馬とはもう別れたんだから


「君との事と少し重ならない?」


「それは………和馬が私を黒木に譲ったって事ですか?」

私のその答えに水野君はフッと微笑んだ


「桐生の考えそうな事だろ?それが君のためなのか、それとも黒木君のためなのか………」

< 160 / 410 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop