私のいとおしい残念な男達


そんな、偶然会ったモモちゃんに言われたから仕方なくみたいな言い方


「…………」


「………最近、和馬に会ったか?」


向かい会ったままそう言う黒木に首を振って見せた


「あっ、でも和馬が海外出向って………」

「ああ、聞いたんだ」


知ってたんだ黒木は……

顔を上げた私から視線を逸らし「とりあえず駅まで行くか」と歩き出した


「黒木は和馬に聞いたの?海外ってどこに?ねぇ、いつから………」


後ろから後を追うようについて行きながら、つい和馬の事を口にした


「そんな事本人に聞けよ」

「…………っ」


聞ける訳ないじゃん………別れたんだから


黒木の背中を見ながら、何となく足の速度を緩めた


「小夏?」

すぐに気がついた黒木が後ろを振り返った



「………そうだった。関係ないもんね、もう」


水野君と和馬の話をしていたのだって、本当は聞いちゃいけなかったんだ和馬の昔の話なんて

いまさら、何を聞いたって戻れやしないのに


「…………小夏」


「ん?」

呼ばれて伏せたまま歩いていた視線を上げると、立ち塞がる黒木の顔がすぐ目の前に降りてきて軽く唇に触れてきた


「!!」


咄嗟に身体を引いて口を手で塞いだ

「な、な、なにっ?!」


こんな人通りのあるところでいきなり何するんだっ!


往来の足を緩めた周りの人たちが視線を向けている

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