私のいとおしい残念な男達


「爽やかなイケメン訪問者って誰だ?」


進行方向と逆に私と向き合ったまま、眉を歪ませてそう詰め寄って言う黒木


「はっ、爽やかって……え、何?」

「後輩女が言ってた男だよっ、随分親しそうに二人でお茶しに行ったって」


「あ………」

水野君のことか?
モモちゃん、なんて言い方を………


『先輩分かってないんですよ。黒木さんがいつもどれだけ先輩の事心配してたか』


「…………」

向き合う黒木の前で、少し視線を落した

「水野君よ、遊園地に来た和馬の友達」


「水野?あの弁護士だって言ってた?」


「そう、たぶん和馬に用があって来てたんだと思うけど、偶然会ったから。薬のこととか水野君に調べて貰ってたみたいで……」


そこまで言うと「ふぅん」と、身体をまた駅の方向に変えて歩き出した


「………あいつ、もう会社辞めただろ。井ノ上って奴」


黒木が歩きながらそう話し出した

「うん……」


「…………」

間を空けて黒木の、深呼吸のような息遣いが聞こえた


「黒木?」

並んで歩きながら黒木を見上げた


「井ノ上の事はすぐに和馬が動いたみたいだ。
社内の防犯カメラを調べたりして、かなり強引に出勤停止に追い込んで辞職させたらしい。井ノ上物産の方も……」


社内会議で先頭に立って短期間に調べ上げた情報を元に、再開発からの取引き停止を突きつけたらしい


その後、薬を使った店を風営法で通報し、それから井ノ上を含む店内で薬を要求した人物がその被害者に訴えられた

< 165 / 410 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop