私のいとおしい残念な男達
「相変わらずブサイクだな、お前」
和馬の部屋からエレベーターを降りてマンションの玄関前で、いきなり目の前に腕を組み棒立ちしている男に言われた
止めようと押さえても、ズルズルと流れてくる涙と鼻水を必死で拭いながらその男を見上げる
「………なんでいるのよ」
「今………会社帰りだ」
そう言いながら、立ち塞がる黒木
どうゆう経路を通れば会社からの帰り道でここ通るっていうのよ…………
和馬のマンションは駅を通り過ぎたとこにあるのに
「仕方ないから、お前の家まで送ってやるよ。そんな顔で1人で電車に乗ってたら珍獣扱いされるぜ」
「いい、今あんたの顔だけは見たくない」
下唇をキュッと噛まないと涙が止まらなくなる
「じゃあ見るな、目を瞑ってればいいだろ?」
そう言って左手を掴まれ引っ張られ、そのまま駅の方へ連れて行かれた
黒木、手が冷たい………
見上げれば鼻の頭や頰が赤くなってる
どれくらいマンションの前で待ってたの?
「…………バカじゃなぃの黒木」
「和馬にもさっきそう言われた………」
「バカ、バカ、バカ黒木っ」
「煩い、黙れ泣き虫女!」
手を繋いだまま、顔も合わせないで歩く中、冷たい空気が涙をゆっくり乾かしていく