私のいとおしい残念な男達
電車の中では、何も話さない黒木と並んで座り
でも手は繋いだままで、私の家の駅まで目を瞑り肩をかしてくれた
目を閉じているとどうしても思い出してしまう
思い出すとまた目頭が熱くなって、のどが詰まってどうしようもなく黒木の肩に隠れるような顔を埋める
時折キュッと繋いだ手に力が入るのを、受け入れてくれるように握りかえしてくれた
「もう、後は家までだから大丈夫だから」
自宅の駅についたのに、まだ家まで送ろうとする黒木を止めた
「どうせまだ折り返しの電車まで時間があるから気にするな」
いやいや、自宅には家族がいるし、近所だってだれが見てるから分からない
なのに、手まで繋がれたままだし………
本当に電車あるのか?もう10時半なんてとっくにまわっている
「黒木………」
「ん………」
「私、結局和馬に振られた」
家までの、暗い道をゆっくり並んで歩きながらそう言った
「ああ………」
「やっぱり友達にも戻れないから」
「…………」
近づく家への道で、ピタリと足をとめた
そして小さく深呼吸した
「きっと暫く引きずる、和馬のこと………」
「いつまでだ」
「はっ?」
「いつまで和馬を引きずってる?」
いつまで……って
「………う、3年くらい……?」
「バカかお前、アラサーじゃねぇかそれじゃあ一年で立ち直れ。いいなっ」