私のいとおしい残念な男達
小夏の番犬
噂なんて本当にいい加減なものだ
和馬がロサンゼルス支店へ行ってしまうと、一変して私への同情の念が飛びかった
もちろん和馬の見送りには行かず、平日だったその日はなんとか仕事に集中させていたのに
出発前だったんだろう
一件のメールが
【行ってくるね。
呉々も波瑠のこと、よろしくね小夏】
なんて無神経なメールを……
その日は人知れずまたパンパンに目を腫らしながら残業したっけ……
そして、噂の同情すら半年もすると私の存在は和馬と共に忘れ去られてしまったようで
平穏無事なサラリーマン生活が続いている
「…………」
「どうしたの?小夏」
「いや………」
部署内の出勤表を出しに、総務部へきたのだけど、最近なんだかちょっと様子が違う
「舞子………江口さん、居るんだよねぇ」
いや、総務部で見掛けることはあるからいるのは、いるはずなんだけど……
気のせい?
用事で総務部に来た私の顔を見るなり、サッと方向を変え奥の方へ行ってしまう
別にそれならそれでいいんだけど、前は見つからない様に避けていただけに、なんだか拍子抜けしてしまう
「小夏のモテ期が終わったのよ。これからアラサーだって言うのに大丈夫?焦らなくて」
そう言ってなんだか意味あり気に含み笑いを見せる
「モテ期………って、そんな時期あった覚えないし、それにまだ28なんですけど」