私のいとおしい残念な男達

「…………」

黒木がタクシーを止め、
有名人の彼女を気にしながら背中に手を回し、その後に続いて乗り込んでいく

「こんな時間からどこ行くんだろう………」

モモちゃんとその様子を眺めながら、二人の乗ったタクシーは行ってしまった


「…………モモちゃん、行こう」



さっきまで比較的良かった気分が、いつの間にかのどが詰まるようで言葉も出ない

心臓の鼓動が早いせいだ
なんだか息苦しくて、ゆっくりと胸を押さえた


「先輩、このままちょっと服とか見に行きません?実はこの近くで先輩に会う服見つけたんです。今度行く合コンように」


そう言って、お構いなく方向を変えて腕を引っ張って行くモモちゃん

ああ、そうだ
確かに何着ていくか決まって無かった

って言うか、合コン行く事になってる………?







今週はこれと言って忙しくもなく、ほぼ定時で帰っている

予定もない平日はそのままロビーに向かい、まだ日の明るい時間帯だから、電車の時間も気にしないでのんびりと家路につく


「おいっ」

私を後ろから『おいっ』と呼ぶ男は大概に一人しかいない

仕方なく振り向く事にする

「早いな、どっか行くのか?」

「別に、もうそのまま帰るだけよ。黒木は?」

この時間に帰るのはほとんど女子社員だからエレベーターから目立ってるよね、君は

「まだ、これから会議と残業だ」

はっ?じゃあ、なぜ呼び止めた?

「忙しいの?」

「ああ、実は今日企画が通って、これからずっと忙しくなりそうなんだ」

少し嬉しそう……って言うか仕事の話をするために呼び止めたの?

< 209 / 410 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop