私のいとおしい残念な男達
「…………」
黒木がタクシーを止め、
有名人の彼女を気にしながら背中に手を回し、その後に続いて乗り込んでいく
「こんな時間からどこ行くんだろう………」
モモちゃんとその様子を眺めながら、二人の乗ったタクシーは行ってしまった
「…………モモちゃん、行こう」
さっきまで比較的良かった気分が、いつの間にかのどが詰まるようで言葉も出ない
心臓の鼓動が早いせいだ
なんだか息苦しくて、ゆっくりと胸を押さえた
「先輩、このままちょっと服とか見に行きません?実はこの近くで先輩に会う服見つけたんです。今度行く合コンように」
そう言って、お構いなく方向を変えて腕を引っ張って行くモモちゃん
ああ、そうだ
確かに何着ていくか決まって無かった
って言うか、合コン行く事になってる………?
今週はこれと言って忙しくもなく、ほぼ定時で帰っている
予定もない平日はそのままロビーに向かい、まだ日の明るい時間帯だから、電車の時間も気にしないでのんびりと家路につく
「おいっ」
私を後ろから『おいっ』と呼ぶ男は大概に一人しかいない
仕方なく振り向く事にする
「早いな、どっか行くのか?」
「別に、もうそのまま帰るだけよ。黒木は?」
この時間に帰るのはほとんど女子社員だからエレベーターから目立ってるよね、君は
「まだ、これから会議と残業だ」
はっ?じゃあ、なぜ呼び止めた?
「忙しいの?」
「ああ、実は今日企画が通って、これからずっと忙しくなりそうなんだ」
少し嬉しそう……って言うか仕事の話をするために呼び止めたの?