私のいとおしい残念な男達
「何それ、カッパ着てるみたいだな……」
はっ?
駅を出たとこで後ろから声を掛けられ、振り向けばやっぱり弟だ
今度はどうも仕事帰りらしい
「…………っ」
「なんでそんなの着てんの?合コンは?」
う………鬱陶しい
「煩いなぁ………」
「どう見てもこれ男物の背広だな、もしかして姉ちゃん何?マーキングされた?」
クックッと、含み笑いをしながら近付いて、
腕を通してない黒木の背広を引っ張り上げ、自分の腕を通した愁士
「ちょっとぉ……」
「お、ピッタリ」
それいえば2人の背格好って似てるかな……
「ダメだよ、これ返さなきゃいけないんだから」
「………あれ、何だ?」
何か気になったのか、その胸ポケットをガサガサと探ぐりだした
「人のだって言ってるでしょっ、もう……」
「あ」
そこから取り出した用紙
「え?」
ホテルの御利用明細書……?
「……………」
すぐにそれを愁士の手から取り上げた
「………だから、返しなさいってっ」
背広も脱がせ受け取ると、腕に持ち、先を歩いた
暫く歩いていると、後ろからついて歩く愁士が口を開いた
「………それ、姉ちゃんとじゃない……よね」
「なにバカな事いってるのっ……?
私、最近外泊なんてしてないでしょっ」
「………まぁ、確かに」
明細書の日付はこの前の水曜日の朝
モモちゃんとネイルサロンへ行った次の日
しかも、宿泊はシティーホテルのダブルルーム
ときたもんだ