私のいとおしい残念な男達
「……………」
「なぁ………」
後ろからまるで見下ろされている様に声が掛かる。あいつと同じくらいの背丈だけに一瞬だけ身構えてしまう
「何?」
「姉ちゃんってそいつの事どう思ってるの?」
「そいつって?」
「その、背広の男」
「…………」
そんな事、こいつに答える義務があるのか?
黙ったまま、つい歩みが早くなる
「ただの友達じゃないだろ?」
「ただの友達よ」
即答した
ただの友達………そう、しかも元カレの
もともと女たらしで、鬼畜な野郎だ
頭の上から愁士の盛大な溜め息が、ワザとらしく落ちてきた
「姉ちゃんって、相変わらずそうゆうとこあるよなぁ………」
呟くように声でそう言われ、ふいっと振り向いた
「またグチグチ余計なこと考えてるだろ?」
「はぁっ?」
今度は顔を上げる前に覗き込まれた
「その明細書の事、勝手に思い込んでるだろ?
朝の支払い=泊まり、ダブルルーム=女って、
顔が怖ぇーよ分かりやすく目が怒ってる」
「…………っ」
その通りじゃん
「例えばその日は終電が間に合わなくて仕方なく泊まったとか、たまたまシングルやセミダブルの部屋が空いてなくてダブルにしたとか」
「平日に、そんな偶然重なる訳ないじゃない………」