私のいとおしい残念な男達

「言っとくけど、今日朝一回帰って来たから」

そう言って弟の前を通り抜ける

一度帰ってきたが、既に皆仕事に出掛けた後で、家には誰もいなかったが


「ふぅん……」

母親と同じ反応だ

27歳にもなって自宅通いなんてこんなものだ
当たらず障らず、お互い自分の今日の出来事をペラペラとは喋るほど、家族の会話なんてない。

の、はずなのに……後ろから声を掛けてきた

「昨日飲みに行ってたんじゃねぇの?それとも和馬さんとこ泊まったとか?」

「…………」


それ、あんたに関係ある?


部屋までなにも応えずにいたらついてくるし
ったく、自分の事は何も言わないくせに他は詮索してくるところ…………母さんそっくり。


「…………友達のとこに泊まったのよ」


そう言って部屋のドアを開け、そこで終わりだったはずなのに、奴は
部屋の扉を開けたままそのスペースに凭れかかり、尚も話し続ける


「友達って?酒癖の悪い姉ちゃんを勇気をもって泊める奴がいるんだな」


…………失礼だな、おいっ


3歳下の弟、愁士(しゅうじ)

会社はIT関係の仕事だと言う彼は、いつも8時には帰宅する

「主にアプリ作ってる」と、言っていたが、実際何やってるかサッパリ理解できない


「最近さぁ、姉ちゃん和馬さんとうまく行ってないだろ、もしかして」


お前はシスコンか?そんなに私の行動が気になるのか?


「母さん口には出さないけど、心配してたぜ。姉ちゃん最近元気がないって」


…………いや、マザコンの方だったか


「関係ないでしょ、そんな……………」


「……?」

鞄の中で震える携帯を取り出して、着信を確認すると、それを弟に突き付ける

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