私のいとおしい残念な男達
近くてもやっぱり遠い
今まで来た事のない社屋18階の
黒木が所属している部署
『企画宣伝広報部』所属のクリエイティブ部門
華やかに感じるが、実状は古臭い決まりで意が通らない事ばかりだと、よく黒木は和馬に愚痴っていた
見た感じ黒木はいない様だ
「七瀬さん?」
さすがに敷居が高くて入り口より更に1m離れた位置から部署を覗き込み、明らかに挙動不審な私の後ろから声を掛けてくれた
「あ、阿部君」
良かったぁ、そうだこの人がいたんだ
「黒木さんなら会議中ですよ、もうすぐ終わると思いますけど……」
「い、いいのっ!いない方が都合がいいから……あの、これ渡しておいてくれる?あいつに」
持ってきた紙袋を、阿部君に託した
「黒木さんにですか?」
その紙袋にあるクリーニングした背広を見た阿部君がクスッと口を緩めた
「背広? ああ、そういえば七瀬さんに貸してたんですね、あの時の上着」
「………え、あの時って?」
「先々週の週末でしょ?確か、七瀬さん合コンに行ってたとか………会社に帰ってきた時には上着着てなかったから」
はぁっ?!
「.な、な、何で知ってるの?!」
「ははっ………あの日、黒木さん飛び出していきましたもん『小夏、あのバカ!何が食事だ、合コンじゃねぇか!!』ってね」
「な…………っ」
飛び出して行った?仕事中に?
「……ねぇ、それってどんな状況だったの?」