私のいとおしい残念な男達
「黒木、その日残業中だったの?」
「まあ……結構仕事の期限が限られてましたから、戻って来た後はそのまま次の日まで休日出勤になりましたけどね」
「……………」
阿部君にも迷惑を掛けたと謝りを入れ、背広の入った紙袋を渡し、もう一言だけ
「あと、弟にくれた石垣結衣の直筆サインと生写真ありがとうって伝えてくれる?喜んでたって」
「へぇっ、石垣結衣のですか?! いいなぁ、そんなのどうやって手にいれたんですか?!俺もファンなのに……」
羨ましそうにそう言う阿部君に首を傾げた
『他に欲しい奴いないから、いらねぇ?』
居るじゃんこんな近くに欲しかった人………
なんだか分からない事だらけで頭が痛くなってきた
「……あの、もう一つ聞いてもいいかなぁ?」
阿部君に一度渡した背広の入った紙袋の中から、ジッパー付きの袋に入れておいたあの明細書を取り出した
どうせクリーニングに出す時にはポケットの中身は出さなきゃいけないんだから、あらかじめ別にしておいたのだ
「あのね…………これ……」
「小夏?」
え…………
「っ!!」
「あ、黒木さんっ」
阿部君が視線と右手をあげる
私は咄嗟にクシャリっと持っていた袋の明細書を、右手で握り背中に隠した
「なんで小夏がこんなとこにいるんだ?」
会議が終わってきたんだろう、資料の束を持って近付いてきた