私のいとおしい残念な男達


「ふぅん…………」

まじまじとその明細書を見る黒木
私はと言えば、ここから何とか解放されたくてとりあえず口を開いた


「もしかして経理に提出するものだったら困ると思ったから……」

言ってはみたが、すぐに鼻であしらわれ


「………………こんな私的な明細書なんか経理に提出するわけないだろ?それよりお前、これで阿部に何聞こうとした?」


私の言い訳はあっさり見破られてしまった


「べ、別に…………それは」

ダメだ、他に都合のいい言い訳が見つからない

口を一文字に閉ざし下を向いた

「…………」

はぁっ……と一息溜め息が落ちてきた頭の上で、クシャリっと丸めた明細書をポケットに放り込んだ


「それ、黒木のよね……」


「……お前に関係ないだろ」

はぁっ?!

その言い方にムッとした

何なんだ、この男は
人の合コンはぶち壊しときながら、関係ないだと?!


「だったら、私にも干渉しないでょ」

「……………」


目を合わせないまま視線を下に向けて、ただ腹立たしさだけで掃き出した

「今度、水野君に食事に誘われたの。でももう邪魔しないでよっ」



「…………ふぅん」


落ちてきた声はただそれだけ

瞼だけ上げて目の前の黒木を覗くと、もう降りてきた階段を戻ろうと方向を変えていた


「勝手にすれば」


階段を上がって行く背中がすぐに見えなくなり、18階の非常階段の扉が閉まる音が大きく響いた



< 235 / 410 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop