私のいとおしい残念な男達
「ふぅん…………」
まじまじとその明細書を見る黒木
私はと言えば、ここから何とか解放されたくてとりあえず口を開いた
「もしかして経理に提出するものだったら困ると思ったから……」
言ってはみたが、すぐに鼻であしらわれ
「………………こんな私的な明細書なんか経理に提出するわけないだろ?それよりお前、これで阿部に何聞こうとした?」
私の言い訳はあっさり見破られてしまった
「べ、別に…………それは」
ダメだ、他に都合のいい言い訳が見つからない
口を一文字に閉ざし下を向いた
「…………」
はぁっ……と一息溜め息が落ちてきた頭の上で、クシャリっと丸めた明細書をポケットに放り込んだ
「それ、黒木のよね……」
「……お前に関係ないだろ」
はぁっ?!
その言い方にムッとした
何なんだ、この男は
人の合コンはぶち壊しときながら、関係ないだと?!
「だったら、私にも干渉しないでょ」
「……………」
目を合わせないまま視線を下に向けて、ただ腹立たしさだけで掃き出した
「今度、水野君に食事に誘われたの。でももう邪魔しないでよっ」
「…………ふぅん」
落ちてきた声はただそれだけ
瞼だけ上げて目の前の黒木を覗くと、もう降りてきた階段を戻ろうと方向を変えていた
「勝手にすれば」
階段を上がって行く背中がすぐに見えなくなり、18階の非常階段の扉が閉まる音が大きく響いた