私のいとおしい残念な男達
『小夏』
耳に残る低い声
いつからだっただろう……
確か、前は『七瀬』って呼ばれてたはずなのに
それに全然違和感なくさらっと「小夏」って
そういえば和馬は気づいていただろうか?
あいつの声は、私の胸に針を刺す
和馬が隣にいた時は、彼が「そんな事ないよ、小夏は気にしないで」ってそう言ってくれた
だから、いちいち腹を立てる事も少なかった
…………けど今は、そのオブラートに包まれた優しい嘘が無くなって、ダイレクトに185㎝の壁から落ちてくる
『………これ以上心配させんな、バカ女』
胸が痛い
『……お前に関係ないだろ』
そう言い捨てて、近くなったり遠くなったり
『勝手にすれば』
私の胸にいくつもの
奴からの言葉の針が刺さる
「先輩、これ色が間違ってますよ……」
「えっ……?」
「数の少ない方のオレンジだって言っといたじゃないですか?!」
私の手の中にあるのは、モモちゃんから言われたオレンジの代物ではなく、これはイエローだ
「あ、ごめん。今すぐ取り替えて探してくるから………あっ」
そう言ってダンボールを机から持ち上げた途端、底が抜けて中身がそのままブチ撒かれた
「ああァ〜………」
中身のビニールに包装されたTシャツがバザバサと机から床へ散らばった
「ご、ごめんっ」
急いで拾い上げようとしゃがんだ瞬間に、肘を机の角にぶつけてしまった
「…………っ!」