私のいとおしい残念な男達
「結構積極的なんですね、水野さん。別に行けばいいじゃないですか?この間だって話は弾んでたし」
「…………」
スマホを両手で持ちながらゆっくりと断りのメールを打ち込む
「今日はお弁当持ってきたから」
その後スマホをポケットにしまい込んだ
水野君は確かにいい人で、話も豊富だしなんの問題もない。
彼氏と別れて半年以上経って、普通なら手を取ってもいいくらいの好条件物件だ
『僕としては、君のそうゆう外見だけですぐに人を受け入れないところもいいと思うよ』
そう言われつつ、少し和馬に似た水野君に、気持ちが引きづられそうになる事はある
だからこそハッキリと断りを入れても、その場限りの断りと判断され、気がつくとじゃあ次は?とメールが………
要はウダウダ状態なのだ
「何だかんだ言っても同じ会社には黒木さんがいるしね?」
なんの気兼ねなく黒木の名前を出すモモちゃんの会話に、さりげなく聞こえないフリをする
「でもその黒木さんも最近、この辺の階で見かける事がなくなりましたけど……」
聞こえないフリをする私の耳元に、息を吹きかけるようにそう語り掛けてきた
「何かあったんですか?」
「…………何もないって」
目を細めながら、さすが作業の手だけは止めないままのモモちゃん
「なんだか先輩が先にまとまってくれないと、私に春が来ない様な気がする………」
そう言って溜め息をついたモモちゃん