私のいとおしい残念な男達
「なかなか豪快な友達もいるんだね、バランス取れてるじゃないか、宇野さんといい君と性格が違って」
「………それ褒めてます?」
クックッと肩を揺らして笑う水野君
「この際、君も僕に言いたい事言って欲しいんだけど……」
舞子が席を立ったおかげで、4人掛けテーブルにカップル座りになってしまったまま、顔を覗き込まれた
伏し目がちに、つい彼の口元へ視線を向けた
『今どっちとキスしたい?』
舞子のふざけた質問が頭を過って、ドキンッと胸が騒いだ
「………っ」
「ん?」
邪な考えを誤魔化す様に、中ジョッキのビールを一気に飲み干した
週末の金曜日は、いつもながらリーズナブルな居酒屋は時間と共に混み合い始め、大学生くらいで団体の騒がしい飲み会風景が、よりヒートアップしている
二人隣同士で喋っていても、偶に声が掻き消されて話が中断させられる
「いつも、こうゆうとこで飲んでるの?」
いつもはこれ程うるさくはないが、多分テストか何かが終わったのだろう、騒がしさが3割増しだ
少なくても水野君みたいなブランドスーツを着たかっちり系のリーマンがブランデーを啜る場所ではない
「よかったら出ない?近くに僕がよく行く店があるんだ」
まあ、いつそう言い出すかと思ってたけど、スマートにレジへ向かうのには驚いた
「ここは自分で払いますっ、舞子の分もありますから」
支払いの前で流されそうになったのをかろうじて止める
「僕も飲んだのに」
「それは奢らせてくださいっ」