私のいとおしい残念な男達

こんなところでおばちゃんの財布の出し合いなんかしていると、後につっかえてしまうから、そうそうに支払いを済ませて居酒屋を出た


「じゃあ、ごちそうさま」

頭を軽く下げられて、爽やかな笑顔でそう言われると、この状況でさほど奢った訳でもないのに、いい気分にさせられる


でも

忘れてた、この人の素性

近くにある水野君がよく行く店は、
タクシーに乗って5分、外からはそこが店なんて分からない『Days』と書かれただけの扉をくぐると、少し世界が違っていた

黒服に案内されて入ったフロアーは、アンティークのカウンターに高級そうなお酒が並んだ棚

私がいつもいる大衆居酒屋とは真逆で、高貴かつ落ち着いた雰囲気のBar フロアーだった


居心地がいい訳がない

ここが『僕がよく行く店』なんだ……


「あの、私こんな格好でいいんですか?」

普段の出勤用スーツ、こんな事なら少しくらい見栄えのいい服装してくるんだった

「格好?全然そんなかしこまったとこじゃないから大丈夫だよ」


いやいや、かしこまるでしょうここは……


アルコール度数の低い甘いカクテルを注文して貰い、軽くグラスを上げて静かに乾杯をした

「普段こうゆうところに来てるんですか?」


さっき居酒屋で言われた言葉をそのまま返した


「前に桐生とも来た事があるんだよ、知らなかった?」


「和馬とも?」

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