私のいとおしい残念な男達

だから、私も見えないとわかってて首を振る

「仕事、頑張って………ってか、程々にね和馬」

『ははっ、ありかとう。おやすみ』


静かに電話を切った


『おやすみ』って、この言葉を言われたらもう今度会う朝のカフェの時まで、電話もメールも出来ないような気がする


いつからだろう。ちゃんとした用事がないと電話出来なくなったのは



世の中のバカップルは、

「声が聴きたかったから……」とか、
「今すぐ会いに来てくれなかったら別れるからっ」なんて

そんな相手を束縛出来る自信がどこから湧いてくるのだろう…………


彼が、忙しいのは同じ会社なんだから分かってるし、それを邪魔するつもりもない

物分かりのいい女だと、自負しているつもりもない


ただ何となく

彼の内に秘めた思いに自分の身の置き所を見失っているだけ


「はぁっ………」


っと、こんな溜め息ついてるから家族にまで詮索されるんだ


パンパンっと気合いを入れるが如く両手で頬をはたき、肺に空気を流し込み平常心より少し顔に喜びを貼り付ける



「ご飯ある?」

ダイニングテーブルに先に座り食事中の弟の隣に座る


「和馬さん、なんだって?」

「うるさい、内緒」


絶対に聞き耳をたてている母と父に、それ以上は口を閉ざし何も応えない私


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