私のいとおしい残念な男達
「ああ、確かに此処もあそこも芸能人には御用達の店だからね……」
「なるほど彼女に頼んだ訳だ…」と一部納得したのか、顎を掴む仕草で考え込む
「……………」
でも絶対また何か詮索する材料を探してる
目を細め視線を向けた水野君は、案の定ニヤリと口角を上げた
「じゃあ、牽制かな?」
「けんせい……?」
「彼女は黒木君の近くにいる小夏さんに自分の存在をアピールしたってところ?」
「…………私にアピってどうするんですか?」
またこの人は、訳の分からない事を…………
それに、黒木になんか近くないし
あの人の方が余程今あいつには近いでしょぉ?
「それはやっぱり………あ」
余計な詮索が始まるのを、タイミングよく遮るように、彼の携帯が鳴った
「ちょっと悪い……」
仕事関係なのか、電話先相手に敬語を使いさりげなく席を立って、人のいない場所に消えて行った
まあ……いいか、とりあえず
ついでに私も席を立ち、お手洗いへ
「おお………っ」
さすがお手洗いもシックなアンティーク調で、トイレと言うよりここで普通にお洒落にお酒が飲めそうな、個室っぽく区切られたパウダールームたち
化粧直しする必要もなさそうだが、少し赤みがかった頰を鏡で確認すると、何となく気分良くファンデーションを塗り直し、口紅を薄くひく
その正面にある鏡が、私の後ろに立つ日向瞳子さんを写した
「あ……?」
「ねぇ……あなたって波瑠君の何?」