私のいとおしい残念な男達
試練
          ** 黒木side **



「陽が短くなってきたな……」


連日続く残業にフッと窓の外に目を向けた

定時の頃にはまだ陽があるが、それも30分を過ぎると夜の暗さをだんだんに誘い込んでいく

日中のまだ残る残暑からは解放されるが、昼間が短くなる季節が始まっていく、かぁ…………

「阿部、終わったか?」

気がつけばもうあと2時間もすれば終電がなくなる



終わらない業務に、普段冷静な阿部でさえ少々の苛立ちが感じられる

「今日はもういいぞ。いくらやってもまたひっくり返されるのがオチだからな」

クライアントの意向をメインに進めても、何が気に入らないのか急な変更の対応に追われるばかりだ

正直一人ものの俺にはなんの苦もないが、妻帯者の阿部にはきついかもな

「………休日は休みたいんで」


週末の月末で、どこの部署も明かりがついたフロアーばかりだ
みんな考える事は同じだな

「残念だが俺には予定が全くない。したがって明日は俺が出てまとめておいてやる。お前は頭の中を冷やしてまとめておけっ」


そう言うと、PCの手を止め視線だけこちらに向けて口を尖らす阿部

なんだよ、その不満そうな顔は………


「だから、黒木さんだけに期待が向くんじゃないですか…………」


「……………」

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