私のいとおしい残念な男達
だって、男性の一人暮らしには普通に無いはずの物があったし……例えば
洗顔はまだしも、化粧水や乳液とメイク落としって、じゃあ元カノの残留品ってやつ?
アロマグッズやローズマリーの明らかな女性用の香水まで
「…………普段からお料理もするの?」
「極力ね。身体が資本だから」
それでもって、完璧までの手料理
これはやっぱり水野君が?
実はどこかに小人飼ってるとか……?なんてね
「なんかすごいね……」
感心している私を横目に彼が眉を上げた
「小夏さんこそ、『愁士』って黒木君以外でも遅くに心配してくれる男、まだいたんだ」
「……え?」
「携帯、昨日も黒木君と一緒にその人からメールがあったから」
メール着信を知らせる音が、さっきも鳴っていたと私のテーブルに置いた携帯を指差した
「愁士っていうのは弟よ」
携帯を手に取り未読メールをひらくと、昨日の終電前くらいの時間から、【帰ってくるのか】
とメッセージが黒木の着信と並行するように送られてきていた
【飲みすぎて友達の家に泊めてもらいました】
と、今更ながら返信をしておいた
なんだかつい、敬語口調での返信だな
「弟?」
「たぶん、母に頼まれてメールしてきたんだと思う。親からの連絡はつい無視していまうから」
打ち終えて、そっと画面をテーブルに伏せた
私が少し不機嫌な態度で食事に戻ると、目の前でクスリッと口の端を上げた
「仲のいい家族なんだ」