私のいとおしい残念な男達

「き、金曜日の夜の……ことなんだけど」

黒木を呼び止めるまでは良かったのに、奴が近づいてきて、見下ろされた状態に完全に固まってしまい、蚊が鳴くような声を出しながら下を向いた


「…………ああ」

一言声が落ちてきた事にビクついたが


「阿部、ちょっと悪い」

張り上げたその声と同時に腕を掴まれ、
「こっち」と、食堂から出た近くの非常用階段の中へ引っ張られた



「…………」


「で?」

もともと、優しい言い方なんてしない奴だってわかってはいる


「………ごめんなさい」


「なにが?」

入ってきた扉に腕を組んで凭れている黒木を正面に頭を下げた


「電話くれたでしょ?それに、舞子から……」


私のことを捜してたはずだって


「…………」


「じ、自分で迷惑かけないって、羽目外さないって言っておきながら、酔い潰れちゃ……て」

向かい合っているのに、
とても黒木の顔を見られないまま、下を向いて目を泳がせた

黒木の、息をつくような溜め息が落ちてきた


「泊まったんだろ………?」


「は、いやでも、朝起きたらちゃんと服も着てたしスッキングも……で、水野君は別の部屋でまだたくさん部屋があるみたいでね……っ」

舞子に言った話をまた一気に話しながら
一瞬、顔を上げて黒木と目が合った途端、視線だけ逸らした

「次の日にはちゃんと家に帰ったし、本当に何もなかったから……っ」

口を尖らせ言い訳のように一気に言い切って、
暫く沈黙が走った


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