私のいとおしい残念な男達
聞き耳をたてたまま
なんだか出るに出られなくなってしまった
「俺にも色々あんだよ。他に何かと込み入った用事がな」
「…………」
「用事って何なんですか?」なんて、追求されながら少しずつ先に声が遠去かっていく気配に、恐る恐る扉を開けた
「でもぉ、阿部さんへの仕事の引き継ぎは、ほぼ終わってるんですよねぇっ!
それに、この前のマカロン残業中に全部食べちゃったじゃないですかぁ〜」
黒木を追いかけながら叫ぶ女子社員の声だけが聞こえて、どうやら黒木は既に食堂へ戻っていったみたいだ
バタンッと重たい非常用階段から出て、扉が閉まり、そのまま冷たい壁扉に背中をつけた
「…………」
京都に出張なんだ……
込み入った用事って、なんだろう……
実は転職の準備だったりして
「ははっ………」
なんとなく咳をするように乾いたのどで、息をしながらムリに口角を上げた
「……ちゃんと話しできた?」
元の食堂の席に戻ると、舞子が身体を縮め顔を覗き込んできた
「ん、」
小さく返事をした私に、怪訝な表情を見せる
「何?またやっぱり怒られたの?!」
心配そうにそう言う舞子に、海鮮丼を堪能し食べ終えたモモちゃんが首を傾げる
「ん〜ん、大丈夫。別に……」
怒られもしなかったし、寧ろ酔って泊まった話なんてわざわざする必要もなかったかもしれない