私のいとおしい残念な男達


今回のこの資料にも、会社の詳しい経歴などは記載されてはいるが、合作による新ブランドの反響で逆に【ange】自体はフランスブランドってだけで、相変わらすあまり知られないままだった

「………うん、大学の授業で海外雑誌を取り寄せた時に気になって、実際卒業旅行で探して…………でも日本人向けのコスメじゃないからって敬遠されてたはずで……」


「ここ最近の美白ブームに填まったんだよ。品質も日本人向けに改良されたしね」


「ああ、そうそうっ………………」

 ん?

資料を捲る手を止めて顔をあげた

「って、えっ?!」



………………………私は今、誰と話してたんだ?


「確かに【ange】との交渉は難航したんだよ」


いつの間に私が見る資料を覗き見ながら、ニッコリと柔らかな笑顔の男性が同じテーブルの横にある椅子に座り、こちらを見つめていた


「………………」

人間本当にびっくりすると、声も出ないもんなんだ

「【ange】自体のコスメを持ってたりするの?」


その引き込まれそうな優しい瞳に、つい釣られて口角があがってしまう

「あ………はい。あ、でも口紅一個だけ
やっぱりなかなか自分に合うものがなくて………でも、ケースのデザインが可愛くて」

「あの、le bougeon de fleur(ル・ブルジョン・ドゥ・フルール)花の芽をモチーフにしたデザインだろ?
あの目を引くようなケースデザインが三種類選べるシステムがいいよね」


「はいっ!そう、それっ」

思わず身を乗り出した

雑誌で見て一目惚れしたのはまさにそのケースデザインだった


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