私のいとおしい残念な男達
          ** 黒木side **



今日は、久々に会社の『NO残業DAY』で、ほぼ全社員定時帰りとなった


「ハルさんっ、ここ」


待ち合わせの居酒屋で、向こうから手招きされ
声を掛けられた相手のいるテーブルに真っ直ぐ俺は向かった


「よぉ、顔を合わすのは久しぶりだな。愁士」


そう言いながら、先週出張で買ってきた土産袋を差し出した


その紙袋の中身を、頭を傾げて覗き込む愁士

「京都の土産だよ、出張で行ってたから」


席について、とりあえずビールを頼んだ


「フィナンシェって?」

「なんか京都限定の女子に人気のお菓子らしい、会社の奴に頼まれたそのついでに……」


メニューの追加を見ながらそう言うと顔を上げた愁士が目を細めた


「女子に人気のお菓子ねぇ……だったら会社で直接姉ちゃんに渡せば良かったのに」


「………………」


「なに、 また何かあった?ハルさん」


黙り込んだ俺に、呆れた溜め息をついた


「ちゃんと、京都の撮影グッズも入ってるだろ
それも結構探すの大変だったんだぜ」

お菓子と一緒に現在撮影中の映画の京都編冊子
もちろん愁士が好きな石垣結衣のものだ

今回割りとあった時間を全てこれらの頼まれ土産に取られたが


それを確認すると、途端に機嫌を直した



いつもの居酒屋に、たまには一緒に飲もうと誘ったのは俺だ

別に小夏の話がしたかった訳じゃない
この土産を渡すついでにまぁ……
最近どうしてるかくらいは聞くがな、一応
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