私のいとおしい残念な男達
「だから合作での新ブランドには【la fleur unique(ラ・フルール・ユニック)ただ一つの花って意味にしたんだ。もちろん同じデザイナーによるケースで……」
「5色の色違い」
きれいに声が重なって、少し間をおいて「クスッ」と笑われた
「と、言っても俺達営業はただの交渉役なんだけどね」
「………ぇ? えっと、あの………この事業報告資料って」
今回の最後の番に発表される、去年社内で社長賞だった一大事業
まさに《上層階部署》のメイン
同じ会社ながら滅多にお目にかからないエリート集団のひとり?!
そ………そう言えば高そうなスーツに、すこぶる品のある笑顔
「七瀬さんの新規事業部の発表も見たよ。かなり緊張してたけど、流行の予測をみこしての輸入雑貨の案は確かにこれから注目されそうだよね」
「いぃぃ……いや、そんな滅相もないっ!」
ん…………あれ? 私、名乗ったか?
「あ、えっ……と」
「桐生君、ここにいたんだぁ」
改めて横に座る男性を見直し、一体誰なんだろうと聞こうと躊躇っていると、
後ろから少し鼻にかかった高めの声に遮られた
その黄色い声の持ち主と、あともう一人の女性が彼に近寄ってきた
「今日、飲みに行くでしょ。海外組も今日は上がれそうだって。もちろん企画も誘って」
隣に座る私には、まるで目に入らないかのごとく、真っ直ぐ彼を誘う彼女たち