私のいとおしい残念な男達


「…………あれは俺の明細書じゃねぇよ」

あれからだいぶ経ってるが、小夏がそんな誤解をしてるなら、くってかかってきてたのも分かる


あの明細書は阿部のだ

嫁さんの誕生日祝いを口コミで評判のシティーホテルを予約して泊まった時のもので

部屋の景色も雰囲気もルームサービスも良かったと薦めてきたんだ

「クリスマスの予約はもうしないと間に合いませんよ黒木さんっ」

なんて言われ、その予約電話用に渡された明細書を、うっかり背広に入れたままだった



あの時、小夏がその明細書の事を阿部に聞こうとしたみたいだったから、思わず関係ないと

言ってしまったな俺…………


とりあえず、あれは俺が利用した明細書ではない事を、愁士に説明した

「そもそも、簡単に疑われるのは普段から信頼関係ってものがないんじゃないの?姉ちゃんとハルさんは」

「うっ……」

痛いとこ突きやがる
確かに、正直あいつからみれば、俺は女たらしにしか思われてない

溜まりに溜まった自分の行いのツケが回ったな


はぁっ……と、今更ながら深く溜め息をついた


「今日、小夏は?」

結局、小夏の事を聞けるのも頼るのもこいつだけな訳だ



今日は会社で前々から予定されていた
会社全社員の「NO残業DAY」だし

きっとあの男と……


「あ、飯いらねぇって朝言って出たけど、どうせまたいつもの女子会だろ?」


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