私のいとおしい残念な男達


照らしてくれる携帯ライトを持ちあげている手が、切れた息に合わせてゆっくり上下していた



「………何で黒木が?」


あの時と同じように、まるでスーパーマンみたいにタイミングよく助けにきてくれた


そう質問した癖に、答えを聞かずにふっと、照らしてくれるライトの手が疲れるだろうと、その手を降ろすように促し、顔を見上げた


まだ震えが止まらない私のその手を見破られ、落ち着かせるように、その下ろしたライトを持っていた手を私の背中に回し、ポンポンと軽くされた


「落ち着くまで大丈夫だから」


「…………」


そう言われ、抵抗なく真っ直ぐ黒木の腕の中に自分から入り込み、頭を埋めた

黒木の胸から聞こえる心臓の音に耳を傾け、その背中に腕を回した



でも安心したのと同時に、さっきのあの男の、井ノ上発言を思い出した


『聞かせてくれない?あいつにヤられた?』

耳に残ったその声に
さらに身体が震え、涙が溢れだした


「うっ……ひ、っ……」


暫く、黒木の胸に顔を埋めながら声を殺して鼻を引つかせた





「………小夏?」

落ち着いたところで溢れ出た涙も止まり
徐に掛けられた黒木の声に、ふと我に返った


「はっ、ご、ごめんっ!!」

自分から腕を回し、しがみ付いていた状態に気がついて、急いで身体を引いて離れた


ヤバっ、何やってんのっ?!私


黒木の胸を押し出すように伸ばした両腕が、
今度はグィっと掴まれすぐに頭を引き戻された

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