私のいとおしい残念な男達
「あっ……」
「………いいよっ、そのままで」
一見ぶっきらぼうに聞こえるその言い方だけど、引き寄せ抱き締められたその腕は強くても優しかった
さっきまで感じていた暗闇やあの男の恐怖感が、段々と薄らいでいく
携帯も取り敢えず床に置いて、一定の場所だけ明るくなっている状態だが、それほど暗いと感じなくなっていた
「………なんで黒木、ここにいるの?」
その胸に顔を埋めたまま、また同じ質問をした
頭の上から、黒木の溜め息と共に今度はその答えが落ちてきた
「居酒屋で岬たちに会ったんだよ。俺は友達と飲んでて……」
「舞子たち………と?」
いきなりの停電に、私は咄嗟に舞子に電話をしたが、そういえば今日はモモちゃんと二人で飲みに行くって言ってたっけ
「偶然岬と話してた時にお前からの電話があって、お前ちゃんと聞いてなかったのか?今日の停電の事……?」
今日の一斉停電の事は、聞いて頭にあったはずなのに、その時はすっかり忘れてパニックになっていた
「………忘れてた」
呆れたように奴の舌打ちする音がした
「ったく、腰抜かしてるとかバカだろ」
いつものムカつく毒舌なのに、なぜかその声が胸に素直に響く
「ん……バカかも」
黒木の背中に回した手に、なんとなくキュッと力を込めた
「…………」