私のいとおしい残念な男達
小夏より高い位置で、自分の携帯を奪い返そうと伸ばすその手を避けながら話す
「あんたにとって、その婚約者なり元カノとかの問題なんて本当は大した事じゃないんじゃないか?」
「黒木っ、お願いだから携帯返してっ!」
両サイドを綺麗に編み込んでセットしてある小夏の頭を押さえつけたまま、尚も奴に言う
「大方、小夏があんたの思い通りにいかないか
ら、そのための応急処理か何かだろう……」
「何訳のわからない事言ってるのよっ黒木!」
「うるさい、小夏」
横から騒ぎたてる声に黙れと押さえ込んだ手を伸ばして携帯から小夏を遠ざける
『なんだか酷い言われ方だなぁ……僕は君がさわるなって言うからこの間我慢したのに』
まだ奴の方に余裕がみられる
この間、店内が外から見渡せるカフェで小夏と並んで座る二人を見かけた時、外から見つけた俺に当然気づかない小夏に対し、奴はこちらに一瞬視線を向けて微妙に口角を上げた
『別に僕は今日の事を彼女に強制した覚えもないんだけど』
「だから小夏が断れない性格だってこと分かってるんだろっ」
こっちが言いたい事は分かってるはずだ
「とにかく恋人代行だろうが何だろうが、俺が行かせる訳ないだろ、そんなところへ……
もし小夏があんたに貸しがあるって言うならそれは俺が代わりにちゃんと返してやるっ」
『…………』
電話口の向こう側から溜め息が漏れた