私のいとおしい残念な男達
「七瀬さんを飲みに誘おうと思うんだけど、波瑠も一緒にどう?」
へっ?! 私………?
明らかにこの場の中心人物である彼がそう言うと、失礼な目の前の男が不機嫌そうな顔をする
「俺はあんまり大勢と一緒には飲みたくない」
「そう? じゃあ、3人で」
そう言って椅子に座ったまま首を傾け、甲高い声の女子二人に
「そう言うことで今日はパスね」と、笑顔を向けた
「えぇっー、でもぉ……」
そんな事を言われるとは想定外だったのか、顔を見合わせて狼狽える女子たち
「ごめん、飲み会の埋め合わせは今度するから、ねっ」
さっき私も引き込まれたその柔らかい笑顔に、思わず彼女たちも魅せられ
「………じゃあ、今度絶対ね」
最後まで、彼女たちに私の存在はいないものとしているようで、そのまま離れていった
「……………」
あれ? ちょっと待って……?
私の存在って今この中に入ってる感じ?
入ってないよねぇ。
だって会話が完全に私の意志を無視してるし
いやいや、この人達が誰だかも知らないし、ちょっと話はしたけど飲みに行くとか
そんな話成立してないし………
頭に乗ったままの失礼な手を払い退け、身体を立て直す
ここは逃げよう………
「七瀬さん、仕事何時に終わる?」
立ち去ろうとする私の背中に、まるで約束事の確認のように声がかかる
「……………私、行くなんて言いました?」
背を向けたまま、顔だけ少し傾け座っているその愛想のいい男に視線を落とした