私のいとおしい残念な男達
「さっきの奴か?」
声が一瞬低くなって、近くにあるその表情が変わった
「……………」
はぁっ……と小さな溜め息をつかれ、
黒木の頭が、ふわりと柔らかい髪と共に私の首筋を擽った
「何ですぐ言わねぇんだよ……」
優しく肩から腕が回ると、クィっとまた黒木の中に引き込まれ、軽くポンポンと背中を押された
「心配させんな、バカ女」
いつもと同じように発せられる声が、温かい奴の息と一緒に耳元を触る
でも
「………っ」
だから、思い切り手に力を込めてその胸を押し出した
「やめてよ…………」
こんな風に一瞬で心臓が飛び出すくらいに動かされるのは……………困る
「…………一緒にしないでょっ」
あんたの、付き合えれば誰でもいい女なんかと
「今は日向瞳子さんなんでしょ?
だったら私なんか構わなくても彼女のことを考えてあげたら!?」
「日向って………智子の事か?」
暗いし、黒木の表情だって見上げなかったら見えない。だから、当然私の顔だって見えないはず
自分でコントロール出来ないくらいブサイクな顔をして、拒否をしたままの腕を伸ばしているのに、まだそのまま奴の腕の中
「久しぶりに会って、盛り上がったんでしょ?お互いフリーならまた付き合うって約束してたから」
「何の話だ?」
見せたくない顔を無理やり覗き込んでくる