私のいとおしい残念な男達
「見たって……?そりゃぁ二人で何度かは飲みには行ったが……」
居酒屋で黒木が彼女の席の隣にいるところや、
一緒にタクシーに乗り込んでいったその時の、
ただ嬉しそうな彼女の笑顔にさえ
それだけでも彼女に嫉妬していた
でもだからって、不機嫌に口を尖らせる資格なんて私にはないのに
「それにホテルの明細書があったじゃん。その日に私、モモちゃんと一緒に黒木と彼女のことちゃんと見かけたもん……」
「明細書って…………?あァァ〜」
思いっきり思い出したかのような声を上げた
恋人の浮気を問い詰めるようなこんな会話に意味はないはず
だって、別に付き合ってる訳じゃないんだから
「それをそっちにこじ付けたか………」
「?」
項垂れて頭を搔きむしり、片手で顔を覆う黒木
そんな黒木を見上げると、覆った指の間から見える奴の切れ長の眼と視線があった
次の瞬間、その指が私の頰を大きくつねり上げた
「ひったっ!!」(痛っ)
両手で引っ張られた頰に、黒木の顔が目の前まで近づいた
「聞け、小夏」
「んなぁっ!」(「放してっ!」のつもり)
摘まれている頰の両手をなんとか剥がそうと腕を掴む
その後すぐに外され、摘まれた頰はそのまま大きな両手で覆われた